東北・北海道支部 だより(2025年度市民講演会)
東北・北海道支部 令和7年度市民講演会が2025年11月22日(土)に東北大学片平キャンパス金属材料研究所2号館講堂とオンラインのハイブリッドで開催されました。今回は、「超電導リニアと共に…」と題して、JR東海 北野淳一氏を講師としてお招きしてリニア中央新幹線の歴史や原理などついて講演していただきました。近年,東北・北海道支部の市民講演会はハイブリッド開催で開催されており,今回も関連ウェブサイトへの案内掲示,低温工学・超電導学会員へのメーリングリストでの配信,仙台市営地下鉄(南北線,東西線)におけるポスター掲示を行って,市民講演会の広報を行いました。8月末の募集開始直後から申し込みがあり,当日は現地(事前申し込み34名+当日申込6名)+オンライン68名(最大)の108名と多くの方にご参加いただきました。
市民講演会は,淡路支部長挨拶の後,鈴木委員から北野氏の略歴が紹介され,北野先生の講演が開始されました。まず,リニア新幹線の歴史について説明がありました。リニア新幹線の構想は,1960年代にアメリカのブルックヘブン国立研究所のパウエルとダンベイによって超電導磁気浮上車両が提案されたところから始まっています。その構想は車体からはみ出る形で磁石が配置されており,独特のアイデアでした。日本では,東海道新幹線の開業前の1962年に,東京~大阪を1時間で結ぶ超高速鉄道の研究が始まっています。磁気浮上車両はリニア中央新幹線だけでなく,ドイツで研究が始まり上海で実用化された上海トランスラビットや愛知万博のリニモなども紹介されました。それらの車両の浮上高さは1 cm程度であるのに対し,リニア中央新幹線は10 cmの高さで浮上しています。これは,日本が地震大国であるため,地震が発生しても車両に影響がないように設定されたことが説明されました。
次に,浮上原理について詳細な説明がありました。通常の列車はレールの上を走行するのに対し,リニア中央新幹線はレールの代わりにガイドウェイというU字型の走行するための通路を有しています。その側壁には,車両に搭載されている超電導磁石と対向する形で8の字型の浮上・案内コイルが設置されています。車両がタイヤで走行しているときは,超電導磁石と8の字コイルの中心が一致していますが,加速して時速150 km程度になると車輪が格納され,車重により車両は下がります。すると,8の字コイルには上向きの力が発生することで,電力を使わずに車両を浮上させることができること(ヌルフラックス方式)が説明されました。また,同様に車体が片側の壁に近づくと,近づいた壁の磁石からは押し返す力が,遠ざかった壁の磁石からは引き寄せる力が働くことも紹介されました。
次に,走行方式について説明がありました。現在の新幹線は車軸間隔が2.5 mとキリの良い数字ですが,リニア中央新幹線の場合,超電導磁石の間隔が1.35 mであり,推進用コイルは0.9 m間隔で配置されています。また,車両の長さは1.35 mの偶数倍(中間車は24.3 m),構造物の長さは0.9 mの整数倍(基本ユニット長12.6 m)の制約があり,品川から名古屋まで,これらの制限の元でコイルが施工されているとの苦労話も紹介されました。また,関連技術として,車両への電力供給について,通常の新幹線はパンタグラフを介して電力を供給しますが,リニア中央新幹線には外部からの電力供給設備がなく,山梨実験線ではガスタービン発電機を用いていたとのことです。しかし,環境問題などの観点から,営業線に向けて非接触・誘導集電システムを開発・導入したことが紹介されました。また,環境に配慮する観点から,無塗装車両やシートなどについても紹介がありました。最後にリニア新幹線実現のための研究などが紹介されました。実際に車両を走行させずに振動による影響などを測定する装置を製作し,実際の車両に搭載される超電導磁石を含む車両を再現して実験を行っているとのことです。また,営業運転を見据えて,1日に1000km以上走行する走り込みも行っているとのことです。さらに,品川駅や名古屋駅など工事中の様子の写真も紹介していただきました。営業運転開始が2027年から2034年に延びてしまいましたが,リニア中央新幹線が多くの人を快適に運ぶ日が楽しみです。
約60分の講演のあと,20分間の質疑応答が行われました。会場からたくさんの手が上がり,またオンラインからも質問があり,北野氏は丁寧にわかりやすく回答していただきました。会場の小学生からは「どのように緊急ブレーキをかけるのですか?」という質問がありました。電気的なブレーキのほかにタイヤで走るときは物理的なブレーキを,また空気抵抗を使ったブレーキも使用することなどが説明され,北野氏も小学生からの質問に目を細めていらっしゃいました。講演会の最後には,大きな拍手で講師の北野様に感謝を伝えました。
講演会終了後,現地及びウェブでアンケートを実施しました。46件の回答をいただいたうち,講演テーマについて「よい」と「非常によい」が44件,講演内容については41件,全体について44件という結果でした。自由記述では「新幹線開通時期には次の技術に目を向けていたとのことですが、今はさらに超電導リニアよりも先の技術に向けた検討もされているのでしょうか。非常に楽しみです。」「超電導の実用化に向けて現在行われていることが知れて良かったです。私は来年から工学系の大学に進学するので、いい経験になりました。」「幅広い内容を簡潔に説明いただき素晴らしい内容で、勉強になりました。リニアに乗れる日を楽しみにしています。」など20件のコメントがありました。このように聴講者の満足度もかなり高い講演会となりました。
最後に現地およびオンラインで参加していただいた市民の皆様および会員の皆様に改めて御礼申し上げます。また、講演をいただいた北野様を始め、お手伝い頂いた関係者の皆様に感謝申し上げます。
(福島高専 鈴木晴彦,一関高専 村上 明,足利大 横山和哉)
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北野先生の講演 |
質疑応答する北野先生 |
2025年度 市民講演会のご案内
| テーマ | : | 超電導リニアの開発と未来社会 |
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超電導リニアは、技術的には既に実用化段階にありますが、これまで数多くの新たな技術開発があってこそ、現在の有人走行としての世界最高速度603 ㎞/hがあります。超電導リニアが中央新幹線として運転され、東海道新幹線と結ばれることで、ひとつの巨大都市圏が誕生します。今回の市民講演会では、JR東海の北野淳一氏より、超電導リニアの創成期から今後実装される中央新幹線の概要に加え、鉄道が目指すあらたなエネルギー課題への取組みについてもご講演をいただく予定です。
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| 主 催 | : | 低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 |
| 共 催 | : | 東北大学金属材料研究所 |
| 日 時 | : | 2025年11月22日(土)14時00分〜15時30分頃 |
| 会 場 | : | 東北大片平キャンパス 金属材料研究所 2号館講堂 対面とZoomのハイブリッド |
| 次 第 | ||
| 14:00 | : | 開会、主催者挨拶 低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 支部長 淡路 智(東北大学教授) |
| 14:05 | : | 講演「超電導リニアと共に」
講師:東海旅客鉄道株式会社(JR東海)中央新幹線推進本部 リニア開発本部 担当部長 北野 淳一 氏 |
| 15:30 | 頃 | 終了 |
| 参加費 | : | 無料 |
| 申込先 | : | 下記のフォームからお申し込みください。 https://forms.gle/Dm7wCXwTVYfjjVV1A |
オーガナイザー |
: | 鈴木 晴彦(福島高専)、村上 明(一関高専)、横山 和哉(足利大)
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問合先 |
: | 講演会について: 福島高専・電気電子システム工学科 鈴木 晴彦 電話:0246-46-0799、 e-mail:haruhiko_s[@]Fukushima-nct.ac.jp 参加申込について: 足利大学・創生工学科 横山和哉 電話:0284-22-5651、 e-mail:yokoyama.kazuya[@]g.ashikaga.ac.jp 会場について: 東北大学金属材料研究所 淡路 智 電話:022-215-2151、 e-mail:awaji [@] tohoku.ac.jp |






