2020年度 低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 学生研究交流会 開催報告

   
1.企画概要
企画名称
2020年度 低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 学生研究交流会
実施日時
2020年 11月 14日 (土) 12:00 ~ 19:15
内 容
研究室ごとの研究紹介、数値解析ソフトウェアに関する講演会、超伝導クイズ大会
目 的
今年はCOVID-19の蔓延のために学生交流のきっかけとなる機会の多くが失われている。そこで、オンライン上での学生主催かつ学生のみ参加の企画を通し、学生間交流の活発化や学生の主体性の向上を目指す。
2.実施内容
参加者
参加研究室
北海道大学 電磁工学研究室、岩手大学 藤代・内藤研究室、東北大学 淡路研究室、東北大学 橋爪・伊藤・江原・程研究室
参加人数
計20名 (博士研究員: 1名、博士課程: 5名、修士課程: 7名、学部: 7名)
<内容詳細>
・研究室紹介@Zoom
 研究室紹介の形式は、担当者(複数)がZoom上でプレゼンテーションを行い、自由なタイミングで参加者からの質問を投げかけるといったものであった。
  東北大学淡路研究室からは、東北大学金属材料研究所付属強磁場超伝導材料研究センターの設備紹介、ならびに研究紹介があった。世界でも有数の設備の情報に関心を促される学生も多く、発表者への質問が多くあった。東北大学橋爪・伊藤・江原・程研究室からは、Webカメラを利用した専攻・実験施設のライブツアーが実施された。核融合炉工学・ccの様々な装置が紹介された。紹介中の質問では、冷媒の扱いの安全性や核融合研究の将来像に関するものがあった。岩手大学藤代・内藤研究室からは、スライドによる研究紹介と撮影された動画による研究室内ツアーが実施された。今回の発表の中では専門色が強く、参加者にとっては超伝導バルクの基礎から開発の現状までを学ぶ機会となった。北海道大学電磁工学研究室からは、撮影された動画によるキャンパスツアーと、ライブ配信による研究室ツアーが実施された。数値シミュレーションを主とした研究室ならではの大規模計算機群や、北海道大学の名物でもある広大な敷地の紹介があった。
 世間でオンライン会議サービスが日常的に使用されるようになってから暫く時間が経過していたこともあり、Zoomでの企画進行において特に問題は生じなかった。今回は、通常のオンラインミーティング同様、雑音防止のために発言者以外は発言時以外で基本ミュートと設定していた。一方、全員マイクをONにした状態で雑音が入った方が、オンサイトの企画のような臨場感が得られるとの意見も出ていた。この点は、企画の趣旨により調整を図る必要がある。参加者の中には研究関連の背景の無い学部3年生も見られた。研究室紹介では後述のようにやや専門的な内容が中心的になっており、上記の学生には理解、交流のハードルが高かったとの意見もあった。よって、超伝導の入門を主とした企画や、低学年でも交流のしやすい空気づくり(ポスター発表会など)も検討してく余地がある。

・講演会@Hubs by Mozilla
 異分野間交流を促すべく、超伝導・低温工学の分野外の学生に講演を依頼した。まずは”災害科学国際研究所 地域・都市再生研究部門 計算安全工学研究分野”所属の菅野蓮華氏より、『今日から始めるR言語』と題して数値解析ソフトウェアであるR言語の基礎から、R言語を活用した情報処理の魅力についての講演があった。続いて北海道大学 情報科学院 電磁工学研究室の藤田祥伍氏より、『Mathematicaを使ってプレゼン資料に磨きをかけよう! ~ 入門編~』と題して、数値解析ソフトウェアであるMathematicaの基礎から、Mathematicaを用いた簡単な電磁界シミュレーションについての講演があった。
 両講演共に参加者の関心が強かったようで、講演内の質疑応答が活発であった。また、今回の講演者は低温工学・超伝導とは直接かかわりのない分野の出身であり、講演の中で取り上げられた専門に触れる内容は参加者にとって新鮮であったように感じられた。

講演会の様子

・超伝導クイズ大会@Hubs by Mozilla
 超伝導コミュニティへの参加の敷居を下げるべく、専門的な内容からジョークまでを網羅するクイズ大会を行った。優勝者には景品として、自身の著作物の要旨を印刷したマグカップ(https://sciencegrit.com/)が与えられた。競争要素はあったものの、参加者はむしろ純粋にクイズを楽しんでいる様子がうかがえた。

<VRルームサービス(Hubs)の利用について>
反省
 現地開催イベントのような臨場感を再現する試みとして、VRルームを利用した各種企画を実施した。操作方法に戸惑いを感じる参加者は多少いたものの、後述の参加者アンケートの結果に示す通り、好評であった。学会発表のような聴講側への一方的なプレゼンテーションにはZoomのようなオンライン会議の方が向いている。一方、今回実施した質疑を交えながらの講演会や、進行中の交流を促したいクイズ大会等にはVRルームの使用は向いている。今回使用したHubs by Mozillaはオープンソースの無料サービスであり、機能や参加可能人数の制限はあったものの、企画を進行するにあたり大きなトラブル(通信障害やプレゼンの中断)は生じなかった。今後は関連の他サービスの利用を視野に入れることも良いと考えられる。

意見
・普段のzoomなどとは違って臨場感があって面白かった。
・楽しかった
・常にマイクオンでもよいかもしれない
・いろいろ面白い機能を利用できるし、交流会としていい形式だと思います。
・Hubsにつないでやることがスライド発表なのであればzoomでいいのかなと思いました。グループセッションとしての利用であれば非常に面白いと思います。
・前方のスクリーンだと少し見づらい部分があったのですが、配布資料があったためわかりやすかったです
・Hubsの音声が聞こえなかった
・マイナートラブルがあったがスムーズに進行していた。
3.総括
 本企画を通し、当初の目的であった学生間交流の促進はおおむね果たせたと考えられる。コロナ禍で注目を浴び始めたオンライン会議サービスや、まだ学術界隈では採用実績の少ないVRサービスを取り入れた企画の実施を通して得られた知見も多く、これらは本学生活動のみならず、”新しい日常”に即した学会活動全般にも活かせると期待される。次年度も同様の企画検討を進めていく予定である。

 

(東北大学 橋爪・伊藤・江原・程研究室 D3 泊瀬川 晋)