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平成 26 年度 材料研究会/東北・北海道支部合同研究会 東北・北海道支部だより

 2014年度 東北・北海道支部研究会/第2回材料研究会/見学会が2014年8月4日(月)~5日(火)に秋田市 秋田大学百周年記念館にて開催された。本研究会は東北・北海道支部と材料研究会との合同研究会であり、今年度は「超伝導材料における電磁現象」をテーマに7件の講演と、さらに今回は見学会として能代ロケット実験場にてロケット実験施設および液体水素の実験装置の見学を行った。参加者は講師含め31名であった。
 1日目は、材料研究会副委員長の挨拶の後、九州・西日本支部との交流特別講演として、小田部荘司氏(九工大)による「縦磁界効果を利用した直流超電導電力ケーブル」と題してご講演いただいた。実用化に向けて様々な実証試験が進められている超伝導送電の性能をさらに高める手段として縦磁界効果の利用を挙げられた。縦磁界効果の臨界電流値改善効果を最適に用いるためのケーブル設計について、実験とシミュレーションによって検討がなされ、twistされたテープ線材を多層にすることによって内部の縦磁界が臨界電流向上に有効にはたらくことを示した。続いて、馬渡康徳氏(産総研)による「超伝導ストリップの電磁現象」と題してご講演いただいた。様々な寸法形状の超伝導ストリップについての磁束挙動解析、また 単一光子検出器における超伝導ナノストリップの常伝導転移の過程を熱拡散方程式とTDGL(Time Dependent Ginzburg Landau)方程式を組み合わせることによる数値シミュレーションの有効性を示した。藤代博之氏(岩手大)は「超電導バルクの着磁シミュレーション」と題して、磁場中冷却やパルス磁場による着磁の補足磁場を、熱伝導等を考慮したシミュレーションによって示した。魯小葉氏(秋田大)は「Bi系超伝導体の状態図と変温焼結について」と題して、Bi系超伝導体の擬二次元状態図を提案した。Bi2223銀シース線材の作製には高温から低温への変温焼結が有効であり、特に845℃から835℃への変温焼結がBi2223の高生成率と高c軸配向性および高Jc値となる結果を示した。
 翌2日目は3件の講演を行った。槌本昌則氏(北科大)による「超電導応用での電磁現象の巨視的解析モデル」では、遮蔽電流モデルや数値的ピン止めモデルの解析手法について述べて実験値との比較結果を示した。応力などの実験値を解析によってほぼ再現可能であり、磁気力などの工学的応用には巨視的解析が有効であることが示された。谷貝剛氏(上智大)は「大型超電導体の素線に働く応力による素線挙動の構造力学的解析」として、ITER用ケーブル・イン・コンジットの撚り導線の素線に作用する力と熱収縮応力から座屈が生じるメカニズムを明らかにした。成尾芳博氏(JAXA)は「液体水素取扱い技術と安全対策基準について」と題して、JAXAの水素実験施設の紹介と安全基準について解説していただいた。
 講演と支部長挨拶を終えた後は、昼食を挟んで見学会となった。例年は4月に開催している見学会であるが、今回は研究会に合わせて行ったものである。秋田市からバスで1時間半移動し、能代市のJAXAロケット実験場を見学した。ロケットエンジンの試験施設、および液体水素を扱った実験施設について実物を前に説明していただいた。大変興味深く特に安全対策については熱心な質問が続いた。
 なお、1日目講演終了後は会場を移して懇親会の後、東北三大祭りの一つとして知られる秋田竿燈まつりに繰り出し、「ドッコイショー」の掛け声とともに夜空に揺れ動く無数の竿燈の淡い灯りに見入った。低温・超電導の工学応用の多くは、様々な現象が複雑に絡み合っているためにその礎として電磁現象の理解が不可欠である。今回の研究会では電磁現象を基礎として低温に関する幅広い分野の知識を得ることができ、参加者にとって有意義な会となった。本会の開催に当たり、会場手配には秋田大 魯氏に、また能代ロケット実験見学にはJAXA成尾氏に 大変お忙しいところをご尽力いただきました。また講師の先生方にはご講演内容をわかりやすくまとめた資料を作成いただきました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 
能代ロケット実験場(大型真空チャンバ)の見学
 
講演終了後 秋田大学百周年記念館前にて
(秋田県立大学 二村宗男)


平成 26 年度 東北北海道支部研究会/第2回材料研究会のご案内

東北・北海道支部と材料研究会との合同研究会を下記の要項で開催します。講演終了後には能代ロケット実験場の見学をおこないます。また、懇親会後には、東北三大祭りの一つである秋田竿灯まつりをご覧いただけます。

主 催
(社)低温工学協会 東北・北海道支部
テーマ
超伝導材料における電磁現象
日 時
2014年 8月 4日(月) 13:30 ~ 5日(火) 16:00(講演は11:40まで)
会 場
秋田大学手形キャンパス 百周年記念館2F会議室
参加費
2,000円(資料代)どなたでも自由に参加できます
プログラム
【1日目】8月4日(月)
 
13:30
13:40
 
開会の挨拶
材料研究会副支部長
 
13:40
14:20
 
《九州・西日本支部との交流による特別講演》
「縦磁界効果を利用した直流超電導電力ケーブル」

小田部荘司(九州工大)
 
14:20
15:00
 
「超伝導ストリップの電磁現象」
馬渡康徳(産総研)
 
15:00
15:20
 
休憩
 
15:20
16:00
 
「超電導バルクの着磁シミュレーション」
藤代博之(岩手大学)
 
16:00
16:40
 
「Bi系超伝導体の状態図と変温焼結について」
魯 小葉(秋田大学)
 《初日講演終了後、懇親会・竿灯まつり見学。》
 
【2日目】8月5日(火)
 
9:30
10:10
 
「超電導応用での電磁現象の巨視的解析モデル」
槌本昌則(北海道科学大学)
 
10:10
10:50
 
「大型超電導導体の素線に働く応力による素線挙動の構造力学的解析」
谷貝 剛(上智大学)
 
10:50
11:30
 
「液体水素取扱い技術と安全対策基準について」
小林弘明、成尾芳博(JAXA)
 
11:30
11:40
 
閉会の挨拶
東北・北海道支部長
 
11:40
 
昼食
 
12:30
 
秋田市出発 バス移動
山本明保(東京農工大)
 
12:30
16:00
 
能代ロケット実験場見学
 
17:30
     
秋田駅到着
 
宿泊
一般12,100円(シングル・1泊朝食込み)
懇親会
5,400円
オーガナイザー
二村宗男(秋田県立大)、淡路 智(東北大)
申込方法
参加を希望される方は、氏名、所属、<宿泊><懇親会><見学会>の有・無 を添えてE-mailで下記へお申し込みください。なお宿泊希望のかたは6月29日までにお申し込みください。
申込・問合せ先
秋田県立大学 二村宗男
E-mail: futamura@akita-pu.ac.jp   Tel: 0184-27-2112