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平成 19 年度 材料研究会/東北・北海道支部合同研究会 東北・北海道支部だより

 2007年度の東北・北海道支部研究会が材料研究会と共催で、7月31日(火)、8月1日(水)、八戸工業高等専門学校中会議室で開かれた。今回は「超伝導材料・デバイスの最近の動向」というテーマで、以下の9件の講演をお願いした。参加者は18名であった。

1.
「超伝導体ナノ構造における時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式の数値シミュレーション」
林 正彦(秋田大学)
2.
「超伝導量子干渉素子の磁気顕微鏡応用」
林 忠之(仙台電波高専)
3.
「Y系薄膜とBi系薄膜 ― 似て非なるもの ー」
内山哲治(宮城教育大学)
4.
「酸化物高温超伝導体の渦糸相」
西嵜照和(東北大学)
5.
《特別講演》「チタンジオレートの熱分解による角柱状酸化チタンの調製とその光触媒作用」
長谷川章(八戸高専)
6.
《特別講演》「RE123系膜中への人工ピンニングセンター導入」
向田昌志(九州大学)
7.
「各種元素をドープしたスパッタGd123薄膜の超伝導特性」
中村嘉孝(八戸高専)
8.
「ナノ組織制御SmBCO薄膜の結晶成長及び磁束ピンニング特性」
三浦正志(超伝導工学研究所)
9.
「相関ピン導入REBa2Cu3Oyの臨界電流密度特性」
難波雅史(東北大学)

 秋田大学の林氏は、ナノメートルスケールの微小な系における超伝導体の基礎物性を数値シミュレーションの立場から報告した。微小円盤状の超伝導体の渦糸状態は従来のアブリコソフ格子構造の他に、渦糸が束になった多価の渦糸を持つ巨大渦糸状態(ジャイアント渦糸)を持つこと、また、微小正方形の超伝導体の場合は、渦糸数が2の場合に巨大渦糸状態が、渦糸数3の場合は4つの渦糸と逆向きの渦糸(反渦糸)が現れることなどを報告した。仙台電波高専の林氏は、HTS SQUIDを用いて大気中・室温中のサンプルの高空間分解能測定を目指すため、SQUIDとサンプルの間に高透磁率のプローブを配置し、フラックスガイドとして機能させるSQUID顕微鏡について報告した。高空間分解能のためには、より先端のシャープなプローブが必要であり先端径100nm以下のプローブを作成した。また、高透磁率のプローブをSTMプローブとして兼用したSTM-SQUIDプローブ磁気顕微鏡を開発し、表面形状像と磁気像を同時測定可能であると報告した。宮城教育大の内山氏は、YBa2Cu3O7-x(Y系)とBi2Sr2CaCu2O8+y(Bi系)の結晶構造の違いと薄膜作成条件の違いについて報告した。Y系に比べてBi系のブロック層が厚いため、有効質量の異方性が変わり、異方性パラメータが大きく異なる。その結果、超伝導の次元性はY系が3D、Bi系が2Dになると報告した。更に、結晶成長に関しても、次元性の違いからY系は成長速度の異方性は小さくc軸配向し易く、Bi系は成長速度の異方性も大きい為、2DのFrank-van der Merwe型となり、c軸配向成膜は非常に容易であると説明した。またBi系の場合、Bi2O3の融点817℃近傍で分解し、Biが抜けるため、Bi2O3の融点曲線以下で成膜しなければならないと報告した。東北大学金研の西嵜氏は、YBa2Cu3O7-x単結晶のH//c軸における渦糸体の物理について報告した。YBCOの酸素欠損は単一で存在するのは非常にまれで、ほとんどの場合、CuO鎖(b軸)方向にクラスターを形成し、弱い点状ピン止め中心として働くと述べた。そこで、各種酸素量における外部磁場-温度の渦糸相図を議論し、3種類の転位線を境に渦糸状態は渦糸液体、ピン止めが強いときの渦糸グラス、規則的な六角格子であるBraggグラスなどの相に分けられる事を説明した。八戸高専の長谷川氏は、ゾルーゲル法によって光触媒性能の非常に高い角柱状二酸化チタンの作製法と性能について報告した。1,3ーブタンジオールを溶媒にして乾燥させた酸化チタン前駆体は角柱状であり、それを500℃で焼成すると有機物が急激に分解され、20nm程度のナノ粒子から構成された比表面積の高いアナタース型角柱状酸化チタンが形成される。この酸化チタンのアセトアルデヒド分解性能は、P-25と同程度の非常に光触媒性能が高いことを示した。九州大学の向田氏は、BaNb2O6(BNO)をドープしたErBCO薄膜とc-軸面内配列a-軸配向YBCO/PrBCO多層膜について報告した。BNOをドープするとc軸方向にナノロッドが形成されるが、Tcの劣化はなく、Jcは基板温度により変化する事から、成膜条件をもっと詰める必要があると説明した。a軸配向YBCO薄膜と非超伝導のPrBCO薄膜を交互に積層し、PrBCO薄膜を2次元ピニングセンターとする発想で研究を行い、b軸方向に電流を流しJc-B-θ特性を評価したところ、B//cのJcが、B//aのJcより高くなる事から、2次元APCとしてPrBCOが機能したと報告した。八戸高専の中村は都合により発表は行われなかった。超伝導工学研究所の三浦氏は、LTG-SmBCO薄膜の成長様式、磁束ピンニング点となる転位、Sm/Ba固溶体、磁場中超伝導特性などについて報告した。LTG-SmBCO薄膜は、seed layerの膜厚を最適化する事で、螺旋転位の存在しないseed layer上に、核生成しやすい化学ポテンシャル差Δμの成長条件でupper layerを作成するため、スパイラル成長ではなく、2D成長すると説明した。また、表面モフォロジーとエッチピット観察などから、LTG-SmBCO薄膜は粒間における刃状転位のみが存在していると説明した。また、Sm/Ba組成比-酸素量-自由エネルギー差の相図を用いて、化学量論組成の相とSm-rich相の2相が同時に成長するメカニズムを述べた。また、LTG-SmBCO薄膜内部にナノサイズlow-Tc相導入により、77KにおいてB=9TまでNbTi(@4.2K)と同等のJcを得る事に成功したと報告した。東北大学金研の難波氏は、異なるc軸相関ピンを有する3種類の薄膜試料における磁束ピンニング状態図について報告した。試料はBZO添加Y123膜、LTG-Sm123膜、重イオン照射Y123膜である。Jcの磁場印加角度依存性より、B//cでのJcのピークは、磁場の増加と共に絶対値は減少するが、BZO添加Y123膜では消滅、LTG-Sm123膜では一旦消滅した後に増加、重イオン照射Y123膜では、増加し続けると説明した。この結果から、マッチング磁場以上ではBZO添加Y123膜はc軸相関ピンが効かなくなり、ランダムピンが支配的、LTG-Sm123膜は一旦ランダムピンが支配的になり、その後、c軸相関ピンが再び支配的、重イオン照射Y123膜はc軸相関ピンが支配的で、むしろ高磁場ほど増加すると説明した。

 初日の講演の後は、日本で最も大きいと言われる八戸三社大祭の山車を、ビール片手に飲みながら見学し、その後、海の幸を堪能しながらお酒を酌み交わし、家庭的な雰囲気で自己紹介をするなど懇親会も楽しいものになった。来年は大曲の花火大会という話題も出るなど、盛り上がって頂いたようなので幸いであった。

(中村嘉孝)