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平成 18 年度 材料研究会/東北・北海道支部合同研究会 東北・北海道支部だより

 2006年度の東北・北海道支部研究会が、第2回材料研究会との共催で、8月2日(水)、3日(木)、岩手大学図書館多目的学習室で開かれた。今回のテーマは「先進超伝導・低温材料技術の最近の進展」というテーマで以下のような9件の講演をお願いした。参加者は26名であった。

1.
「従来型および先進超伝導線材の応力/ひずみ特性評価」
片桐一宗(岩手大学)
2.
「事前曲げ歪効果によるNb3Sn線材の超伝導特性の向上」
小黒英俊(東北大学)
3.
「超電導応用機器材料システムの極低温・強磁場力学特性評価」
進藤裕英(東北大学)
4.
「ダイヤモンド超伝導の最近の展開:物質材料研究機構」
高野義彦(物質材料研究機構)
5.
「スパッタ法による酸化物超伝導薄膜の作製技術の現状」
道上 修(岩手大学)
6.
《特別講演》「各種超伝導体の臨界電流特性評価」
木内 勝(九州工業大学)
7.
「小型冷凍機を使った超伝導バルク磁石と産業応用への可能性」
岡 徹雄(新潟大学)
8.
「超電導バルク材料の応用技術と実用化への課題」
津田 理(東北大学)
9.
「超電導材料応用への数値解析からのアプローチ」
槌本昌則(北海道工業大学)

 岩手大の片桐氏はNb3Sn多芯線材、Bi2223シーステープ、Y系coated conductor、MgB2線材とこれまで研究してきた数多くの超電導線材の機械的性質を横断的にまとめて報告した。東北大の小黒氏はNb3Sn線材の事前曲げ歪効果が超伝導特性を向上させることを明らかにし、React&Wind法テストコイルの特性について報告した。東北大の進藤氏は低温で使用する金属材料やFRP積層材料等を対象に極低温・強磁場力学特性の基礎的事項を取り上げ、現在までの研究状況を展望した。物材研の高野氏は高濃度にホウ素をドープしたダイヤモンドの超伝導性の歴史と背景を解説し、物材研で10Kを上回る超伝導転移温度を達成したことを報告した。岩手大の道上氏はスパッタ法の現象・特徴と酸化物超伝導薄膜の性質を要約し、高品質・高性能な酸化物超伝導薄膜を作製する方法、大面積化、高Jc化についての現状を報告した。

 毎年、九州・西日本支部から相互交流を深める目的で講師の派遣をお願いしている。今年は九工大の木内氏に特別講演をお願いした。木内氏はBi2223多芯テープ線材、YBCO-coated 線材及び、MgB2超伝導体に注目し、磁束クリープ・フローモデル及びその解析結果得られた成果を報告した。

 新潟大の岡氏はバルク磁石の現状をまとめ、特にマグネトロンスパッタ装置やNMRへの適用の現状を報告した。東北大の津田氏は実用化が期待されているバルク材の応用例を取り上げ、バルク材料の応用技術と実用化への課題を提言した。北工大の槌本氏はバルク超伝導体のパルス着磁における電磁現象や熱的・機械的性質を巨視的な数値解析で評価したこれまでの結果をまとめて報告した。

 対象とする材料も超伝導線材からバルク、薄膜、さらには構造材料までと幅広く、評価に関しても力学的性質から超伝導特性までと、2日間の研究会で超伝導・低温材料技術の最近の進展の全般について早足で理解することが出来たと思う。東北・北海道支部研究会ではこの数年、北海道地区からの参加者がいなかったが、今回、北工大の槌本氏に講演して頂いた。今後さらに北海道地区との交流と低温工学人口の増加を期待している。1日目終了後の懇親会と「さんさ踊り」見学も盛会であった。

(岩手大学 藤代博之)