令和 3 年度 東北・北海道支部 第23回 超電導・低温若手セミナー 支部だより
東北・北海道支部第23回超伝導・低温若手セミナーが2021年8月30日(月),31日(火)の2日間でオンライン開催された。参加者は,講師6名に加えて,学生35名(うち大学院博士学生5名,大学院修士学生23名,学部生7名),大学・研究所関係者18名,企業1名の計60名であった。本セミナーは大学・研究所や企業の若手研究者や学生を対象に,超伝導の基礎から,超伝導体を用いた線材やデバイス,またそれらに関連する低温技術,超伝導の多方面への応用を理解することを目的に開催されている。本セミナーは従来,隔年に2泊3日(その前は毎年1泊2日)で実施され,若手研究者や学生が集中的に学ぶ場を提供してきた。第23回は2020年に実施を計画していたが,コロナ感染症のために延期し,本年度にオンラインで実施するに至った。東北・北海道支部だけでなく,九州や東京からの参加者もあったことは,オンライン実施の恩恵と思われる。前回と同様に,今回も「超伝導・低温工学の基礎から応用までを幅広く学ぶ」をテーマに初日に超伝導特性の基礎を,2日目に超伝導の各応用分野(材料・電力・デバイス)や低温工学の基礎(冷凍機)を,それぞれの分野の研究者を講師に招いて分かりやすく講義をしていただいた。
初日は,藤代支部長挨拶の後,学生参加者による研究発表(大学院博士課程学生:1名,大学院修士課程学生12名)が行われた。講師・参加教員・企業参加者で採点を実施した結果,大月保直君(東北大学D3),加藤準一朗君(東京理科大学M2),渡邊尚登君(東北大学M2),庄司水渡君(東北大学M1)の4名が優秀発表者として選ばれた。
1日目午後からの講義では「超伝導基礎」という題目で東北大の野島勉氏に2コマ分のご講義いただいた。超伝導の基礎的特性,微視的理論(BCS理論),巨視的現象論(GL理論),磁束状態の物理学について,例え話を交えながら工学系の学生にも超伝導の基礎物理がわかるように説明してくださり,貴重な勉強の機会となった。また,同じ超伝導理論でも物理学と応用物理学で見方が違う点もあり,興味深い議論もあった。
2日目午前からの1コマ目に「超伝導応用1 材料1(HTSバルク,MgB2,鉄系超伝導体)」という題目で東京農工大の山本明保氏にご講義いただいた。それぞれの材料のバルク体によって色々な特徴があることや面白みのある説明があった。2コマ目は「超伝導応用2 材料2(強磁場超伝導線材,超伝導接合)」という題目でNIMSの伴野信哉氏にご講義いただいた。核融合炉などで使用する大電流ケーブルの開発について熱意ある説明があった。さらに,重要技術となる超伝導接合の現状についてもご説明があった。
2日目午後(3コマ目)は「超伝導応用3 電力システム」という題目で東北大の濱島高太郎氏にご講義いただいた。超伝導電力応用の基礎技術であるケーブル・導体・コイルにおいて均一電流を実現するために行った解析・実証実験についての解説や,SMESをはじめとする超伝導技術を用いた電力・水素複合エネルギーシステムの開発状況の紹介をいただき,持続可能な社会の構築の実現のために超伝導技術が有望かつ重要なものであることを改めて認識することができた。4コマ目は「超伝導応用4 デバイス(様々な超伝導高周波デバイス)」という題目で山梨大の關谷尚人氏にご講演いただいた。高周波回路や帯域通過フィルタの基礎,NMR装置用の検出コイルや新宇宙探査地上局用フィルタなどの実際の超伝導高周波回路,ワイヤレス電力伝送などの説明があった。5コマ目は「低温工学基礎 冷凍機」という題目でコンポン研究所の井上龍夫氏にご講義いただいた。冷凍機開発に携わっていた際の貴重な話なども交えた,熱力学,冷凍機の種類・原理,スターリング冷凍機・GM冷凍機・パルス管冷凍機の構造などの説明があった。
初日の夜には若手・学生研究の交流を目的にナイトセッションが“学生研究交流会”の主導で実施された。なお,“学生研究交流会”とは,東北・北海道支部の学生間交流を目的に設立された交流会組織であり,年に数回の学生間交流会を実施している。ナイトセッションでは,博士学生や博士課程進学を予定している修士学生から,超伝導・低温工学分野の研究の魅力,キャリアパスへの考え,研究の悩みなどを修士・学部の学生に語っていただいた。今後も学生参加型のイベントを本若手セミナーに導入し,本分野の学生や研究者同士の交流および人材育成活性化の一端とできればと考えている。
2日目の最後に閉会式を行い,セミナーを終了した。藤代支部長から本セミナーの総括があった後,学生優秀発表者に対して若手奨励賞が授与され,閉幕した。
最後に講師の皆様には,多忙な中講義をお引き受けいただきましてありがとうございました。この場を借りて改めてお礼申し上げます。また,参加していただいた先生方,学生の皆さん方にもお礼申し上げます。参加した学生間での個別交流もセミナー後に行われたとの報告もあり,本セミナーの開催意義が改めて確認できました。次回は2年後で,場所は未定ですが,参加者が幅広く超伝導・低温工学を学び,また交流・研究促進を図れるような機会にできればと考えています。多くの学生・若手研究者の皆さんの参加をお待ちしています。
(北海道大学 野口 聡)
令和 3 年度 東北・北海道支部 第23回超電導・低温若手セミナーのご案内
本セミナーは大学や企業の若手研究者や学生を対象に、超伝導の基礎から、超伝導体を用いた線材やデバイス、またそれらに関連する低温技術、超伝導の多方面への応用を理解することを目的に開催されています。本年度は、コロナ禍であることからオンラインで実施し,若手研究者や学生が集中的に学ぶ機会を広く提供することとしました。本年度も「超伝導・低温工学の基礎から応用までを幅広く学ぶ」をテーマに初日に超伝導特性の基礎を、2日目に超伝導の各応用分野(材料・電力・デバイス)や低温工学の基礎(冷凍機)を、それぞれの分野の研究者を講師に招いて分かりやすく講義をしていただきます。
また、初日には大学院生の参加者を対象とした学生研究発表(1人あたり10分~15分程度・参加人数によって変更の可能性あり)を行い、優秀発表者には表彰を行います。さらに、初日にナイトセッション(オンライン交流会)を実施し、博士課程学生から、超伝導・低温工学分野の研究の魅力、キャリアパスへの考え、研究の悩みなど、ざっくばらんに修士・学部の学生に語っていただき、本分野の学生や研究者同士の交流および人材育成活性化の一端とできればと考えています。多数の学生、若手研究者・技術者に参加をお願いし、一層深い議論と交流を期待します。
テーマ |
: | 超伝導・低温工学の基礎から応用までを幅広く学ぶ |
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日 時 |
: | 2021年 8月 30日 (月) ~ 31日 (火) |
会 場 |
: | オンライン(Zoomを使用予定。参加者には8月25日(水)頃にメールで詳細をお伝えします。) |
主 催 |
: | (社)低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 |
プログラム |
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【1日目】8月30日(月) |
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9:00 |
〜 |
9:10 |
開会式 |
東北・北海道支部長 藤代 博之 |
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9:10 |
〜 |
12:20 |
学生研究発表(途中、休憩含む) |
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12:20 |
〜 |
13:30 |
昼休み |
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13:30 |
〜 |
15:00 |
学生研究発表(続き) |
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15:00 |
〜 |
15:20 |
休憩 |
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15:20 |
〜 |
16:50 |
講義 I 「超伝導基礎1」 |
野島 勉 (東北大) |
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16:50 |
〜 |
17:00 |
休憩 |
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17:00 |
〜 |
18:30 |
講義 II 「超伝導基礎2」 |
野島 勉 (東北大) |
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18:30 |
〜 |
19:00 |
休憩 |
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19:00 |
〜 |
20:00 |
ナイトセッション |
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【2日目】8月31日(火) |
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9:00 |
〜 |
10:30 |
講義 III 「超伝導応用1 材料1(HTSバルク、MgB2、鉄系超伝導体)」 |
山本 明保 (東京農工大) |
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10:30 |
〜 |
10:40 |
休憩 |
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10:40 |
〜 |
12:10 |
講義 IV 「超伝導応用2 材料2(強磁場超伝導線材、超伝導接合)」 |
伴野 信哉 (NIMS) |
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12:10 |
〜 |
13:30 |
昼休み |
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13:30 |
〜 |
15:00 |
講義 V 「超伝導応用3 電力システム」 |
濱島 高太郎 (東北大) |
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15:00 |
〜 |
15:10 |
休憩 |
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15:10 |
〜 |
16:40 |
講義 VI 「超伝導応用4 デバイス(様々な超伝導高周波デバイス)」 |
關谷 尚人 (山梨大) |
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16:40 |
〜 |
16:50 |
休憩 |
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16:50 |
〜 |
18:20 |
講義 VII 「低温工学基礎 冷凍機」 |
井上 龍夫 (コンポン研究所) |
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18:20 |
〜 |
18:40 |
優秀発表賞表彰・閉会式 |
東北・北海道支部長 藤代 博之 |
参加費 |
: | 2,000円(会員、非会員問わず。テキスト代を含む) |
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参加申込方法
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: | イベントペイ(https://eventpay.jp/event_info/?shop_code=8723979707727066&EventCode=6643932858)でお申込み・参加費支払いの手続をしてください。1日限りの参加でも歓迎します。 |
参加申込期限 |
: | 8月20日(金)23:59 → 8月23日(月)23:59に延長しました。(参加費お支払い期限:8月24日(火)) |
学生研究発表 |
: | 申込ページに学生研究発表(大学院生・高専専攻科生対象)の申込の有無、発表者情報、共著者情報、発表題目を入力するところがあります。優秀発表者には表彰を行います。発表言語は日本語または英語とします。 発表の新規性は不問です(自身の研究内容なら過去の学会等での発表内容を含めて構いません)。 申し込み後に登録情報に変更がある場合には問い合わせ先(オーガナイザー:伊藤 悟)までご連絡ください。 |
ナイトセッション |
: | 初日の夜にナイトセッションを行う予定です。若手・学生研究の交流を目的に、先輩達との談話や若手・学生間での情報交換を予定しております。 |
オーガナイザー |
: | 伊藤 悟(東北大),野口 聡(北海道大),山田 博信(山形大) |
問合せ先 |
: | 東北大学・大学院工学研究科・量子エネルギー工学専攻 伊藤 悟 E-mail: satoshi.ito.e3@tohoku.ac.jp Tel: 022-795-7905 Fax: 022-795-7905 |