過去の若手セミナー

平成 25 年度 東北・北海道支部 第18回 超伝導・低温若手セミナー 支部だより

 東北・北海道支部第18回超電導・低温若手セミナーが、2013年9月2日(月)・3日(火)の2日間にわたり、北海道札幌市南区定山渓温泉にある「定山渓 ビューホテル」にて開催されました。参加者は、講師の先生方3名の他に、学生11名、大学や企業からの参加者7名の計21名でした。本セミナーは、大学や企業の若手研究者や学生を対象に、超電導の基礎から超電導体を用いた線材やデバイス、また、それらに関連する低温技術や応用技術を理解することを目的に毎年開催されているもので、今回は、シリーズ企画「超電導材料・応用技術の最前線」の第三弾として、「医療応用の最先端」をテーマとした、MRI用マグネット、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)、がん治療用加速器について、それぞれの分野の一流研究者3名を講師としてお招きし、わかりやすく講義していただきました。
 セミナー初日は、渡辺支部長挨拶の後、「素線絶縁のない超電導コイルの開発」という題目で、北海道大学野口聡先生に講義をしていただきました。マサチューセッツ工科大学で提案された素線絶縁を施さない超電導マグネットの開発状況について、丁寧な説明がありました。素線絶縁を施さない超電導マグネットは、安定性が向上し、高電流密度化が可能であるとのことで、高磁場MRI用に開発がすすめられているとのことです。マサチューセッツ工科大学では、100Tマグネットを製作することも可能となったとの報告もあり、今後のさらなる展開が楽しみです。
 続いて、本セミナーに参加した学生のうち大学院生9名による研究発表会が行われました。1人あたりの発表時間は15分(質疑応答5分含む)と、例年より長かったのですが、まだまだ発表時間も質疑時間も足りていないぐらいに、盛り上がりました。学生は皆、短い時間の中でも、要点がうまくまとめられていて、わかりやすい内容になっておりました。また自分の研究とは異なる分野の研究内容を聞く機会は少ないと思われるため、学生のみならず一般参加者もよい刺激を受けたのではないかと思います。
 学生研究発表会終了後は、宿自慢の温泉と夕食を堪能しました。夕食中は、学生や一般参加者がランダムに座り、各研究室の普段の様子やイベントなどの話で盛り上がり、学生同士の会話も弾んでおりました。
 2日目は、最初に、「超電導バルク磁石を利用したDDSの研究」という題目で、大阪大学の西嶋茂宏先生に講義をしていただきました。まず、DDSの原理をご説明いただき、続いて、ラットによる実験についてのご説明をいただきました。DDSの発展により、将来、我々の医療が変わる可能性があり、参加者も熱心に話を聞いておりました。DDSは実用間近ではあるが、人間などの大きな体で、どこまで対応できるかが課題であるようにも感じました。西嶋先生からは、当初は、DDSについてのお話だけの予定でしたが、除染についてのお話もしていただきました。福島の現状や放射能の影響を知る良い機会となりました。現状では、汚染土壌の扱いで相当な困難があるそうですが、磁気分離技術を活用すれば、汚染土壌から汚染物質を分離でき、体積を大きく減少させられる可能性があるそうです。日本が抱える大きな問題を超電導の力で解決できることを期待し、磁気分離システムのさらなる進展に期待したいと思います。
 最後に、大阪大学の植田浩史先生に、「高温超電導技術を用いた加速器応用」という題目で講義をして頂きました。植田先生には、ご自身の研究だけでなく、世界における加速器の超電導化についての現況を解説していただきました。日本は、世界各国より超電導化が遅れているように感じます。その中でも、植田先生は、超電導を用いたサイクロトロン方式の加速器の開発を目指しており、ターゲットとしては、重粒子によるがん治療です。中性子照射の超電導線の性能から、超電導マグネットの設計、セクターコイルの開発、機械的特性、そして遮蔽電流の影響まで、幅広くお話いただき、機器開発の難しさを改めて教わりました。がんが治療できる病気に早くなるためにも、今後の進展、実用化が大変に楽しみです。
 最後に、閉会式が行われ、渡辺支部長より、学生研究発表の総括がありました。また、初日の学生研究発表者として、東北大学・大武和樹君、北海道大学・伊藤竜誠君の2名には、若手奨励賞が授与されました。
 今回の若手セミナーでは、全体を通じ、活発な質疑応答が行われていたと思います。講義では、装置、機器の開発へ向けた、より具体的な話が多く、学生も自身の研究の在り方などを考えさせられたのではないでしょうか。また、異分野研究者とのディスカッションは、自分の研究内容に関する情報だけでなく、異なる視点からの見解など、様々な知見を得る絶好の機会となりますので、今後も本セミナーをご活用いただければ幸いです。最後に、講師の先生方には、EUCAS2013の直前という大変忙しい時期にもかかわららず、テキスト原稿の作成やセミナーへの参加など大変お世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。来年からは、新シリーズ企画の若手セミナーとなりますが、学生の発表や勉強、情報交換の良い場となりますので、皆様、奮ってご参加ください。おまちしております。


(北海道大学 野口 聡)

平成 25 年度 東北・北海道支部 第18回 超電導・低温若手セミナーのご案内

 本セミナーは大学や企業の若手研究者や学生を対象に、超伝導の基礎から、超伝導体を用いた線材やデバイス、また、それらに関連する低温技術、超伝導の多方面への応用を理解することを目的に毎年開催されています。今回は、シリーズ企画「超電導材料・応用技術の最前線」の第三弾として、「医療応用の最先端」をテーマとした、ドラッグデリバリーやがん治療装置のための材料からシステム応用に至までの最先端技術について、それぞれの分野の一流研究者を講師としてお招きし、分かりやすく講義していただきます。
 また、初日には、学生参加者を対象とした学生研究発表(1人10分程度)を行い、優秀発表者には表彰を行います。なお、本セミナーは、参加者と講師との交流を深めるために宿泊形式としています。多数の学生、若手研究者・技術者の参加をお待ちしております。

主 催
低温工学・超電導学会 東北・北海道支部
テーマ
超電導材料・応用技術の最前線(3)
日 時
2013年9月2日(月)~3日(火)1泊2日
会 場
定山渓ビューホテル 北海道札幌市南区定山渓温泉東2丁目
参加費
学生5,000円、正会員12,000円、非会員17,000円
宿泊代(懇親会費と朝食込)は別途お支払いください。(参加費には含まれません)
払込方法
参加申込をしていただいた方には別途ご連絡いたします。
プログラム
【1日目】9月2日(月)
 
13:30
13:40  
開会式
 
 
13:40
15:10  
講義1「素線絶縁のない超電導コイルの開発」
野口 聡 先生
(北海道大学大学院情報科学研究科・准教授)
 
15:10
15:30  
休憩
 
 
15:30
18:00  
学生研究発表(1人あたり発表10分程度、質疑応答含)
 
18:00
19:00  
自由時間(お風呂等)
 
19:00
21:00  
夕食・懇親会
 
【2日目】9月3日(火)
 
9:00
10:30  
講義2「超電導バルク磁石を利用したDDSの研究」
西嶋茂宏 先生
(大阪大学大学院工学研究科・教授)
 
10:30
10:40  
休憩
 
 
10:40
12:10  
講義3「高温超電導技術を用いた加速器応用」(仮)
植田浩史 先生
(大阪大学核物理研究センター・特任助教)
  12:10 12:20  
修了式
参加申込締切
2013年8月8日(木)
申込方法
E-mailまたはFAXにて、氏名、所属(学生の場合は学年と指導教員名)、連絡先、住所、電話番号、E-mailアドレスを、下記申込先(野口)まで御連絡ください。
申込・問合せ先
北海道大学大学院情報科学研究科システム情報科学専攻 野口 聡
〒060-0814 北海道札幌市北区北14条西9丁目
TEL:011-706-7971/FAX:011-706-7670
E-mail:noguchi@ssi.ist.hokudai.ac.jp  
Back