過去の若手セミナー

平成 23 年度 東北・北海道支部 第16回超伝導・低温若手セミナー 支部だより

 東北・北海道支部第16回超電導・低温若手セミナーが、2011年9月7日(水)・8日(木)の2日間にわたり、宮城県仙台市青葉区作並にある作並温泉ゆづくしの宿「一の坊」にて開催されました。参加者は、講師の先生方3名の他に、学生14名、大学や企業からの参加者は13名の計30名でした。本セミナーは、大学や企業の若手研究者や学生を対象に、超電導の基礎から超電導体を用いた線材やデバイス、また、それらに関連する低温技術や応用技術を理解することを目的に毎年開催されているもので、今回は、シリーズ企画「超電導材料・応用技術の最前線」の第一弾として、「MgB2線材と水素応用」をテーマとした、MgB2の材料・線材特性からシステム応用に至るまでの最先端技術について、それぞれの分野の一流研究者3名を講師としてお招きし、わかりやすく講義していただきました。
 セミナー初日は、渡辺支部長挨拶の後、本セミナーに参加した学生のうち大学生13名による研究発表会が行われました。時間の都合で、1人あたりの発表時間は6分(質疑応答2分)と短かったですが、皆、要点が上手くまとめられていて、わかりやすい内容になっておりました。また、質疑応答も活発に行われ、予定していた時間をオーバーする程でした。自分の研究とは異なる分野の研究内容を聞く機会は少ないと思われるため、学生のみならず一般参加者もよい刺激を受けたのではないかと思います。
 学生研究発表会終了後は、「水素・超電導複合エネルギー技術が拓く持続可能な未来社会」という題目で、東北大学濱島高太郎先生に講義をしていただきました。持続可能な未来社会では、低炭素化やエネルギーの高効率化が必要で、これには、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーをいかに効率よく利用できるかが重要になるものの、再生可能エネルギーの有効利用には、再生可能エネルギーの出力変動補償が不可欠であり、その対策の一つとして、SMESと燃料電池(液体水素貯蔵)を用いた電力変換システムが有あるということでした。液体水素貯蔵は、災害時の大容量非常用電源としても活用できる上、MgB2を用いたSMESコイル冷却んも有用であることから、今後の展開が楽しみです。
 宿自慢の温泉と夕食を堪能した後は、各研究室代表者(学生)による研究室紹介が行われました。研究内容のみならず、各研究室の普段の様子やイベントについても紹介され、学生同士の会話も弾んでおりました。
 2日目は、最初に、「未来の水素利用社会を支える低コスト高性能MgB2線材の開発」という題目で、物質・材料研究機構超伝導材料センターの熊倉浩明先生に講義をしていただきました。MgB2線材の超電導特性や製造方法などの基礎から、MgB2線材を用いた応用システムに至まで、わかりやすく説明していただきました。今後は、コスト低減を念頭に置いた研究開発が必須であり、線材の高性能化には、不純物の低減、ピン止め点の導入、フィラメントの線材化、フィラメント配置の検討などとともに、様々なレベルでの構造・組織制御が鍵を握るということでした。超電導応用機器・システムの実用化では、超電導線材の低コスト化がボトルネックとなっているため、今後の研究の進展に期待したいと思います。
 最後に、京都大学の白井康之先生に、「超電導機器冷却のための液体水素熱伝達特性~水素・電力強調エネルギーインフラをめざして」という題目で講義をして頂きました。能代にあるJAXA実験場で実施された液体水素熱流動実験の様子が紹介され、細かい安全対策を踏まえた実験環境設備など、水素を取り扱う実験の大変さと、この様に厳重に準備された実験環境下で得られる実験データの重みを改めて痛感いたしました。また、液体水素の沸騰熱伝達特性に関する実験の詳細などがわかりやすく説明され、大変勉強になりました。今回、講義でご説明いただいた内容は、現在、科学技術振興機構(JST)の先端的低炭素化技術開発(ALCA)で実施されている研究内容に関するものですので、今後の成果が楽しみです。
 最後に、閉会式が行われ、渡辺支部長より、学生受講者14名全員に修了証書が手渡されました。また、初日の学生研究発表会の優秀発表者として、東京大学・伊藤明植君、東北大学・後村直紀君、山形大学・佐藤秀哉君の3名には、若手奨励賞が授与されました。
 今回のセミナーでは、全体を通じ、活発な質疑応答が行われていたと思います。異分野研究者とのディスカッションは、自分の研究内容に関する情報だけでなく、異なる視点からの見解など、様々な知見を得る絶好の機会となりますので、今後も本セミナーをご活用いただければ幸いです。最後に、講師の先生方にはMT22やEUCAS2011の直前という大変忙しい時期にもかかわらず、テキスト原稿の作成やセミナーへの参加など大変お世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。来年も同様の時期に、シリーズ企画「超電導材料・応用技術の最前線」の第二弾を実施する予定ですので、皆様奮ってご参加下さい。お待ちしております。


(東北大学 津田 理)

平成 23 年度 東北・北海道支部 第16回超電導・低温若手セミナーのご案内

 本セミナーは大学や企業の若手研究者や学生を対象に、超伝導の基礎から、超伝導体を用いた線材やデバイス、また、それらに関連する低温技術や応用技術を理解することを目的に毎年開催されています。今回は、シリーズ企画「超伝導材料・応用技術の最前線」の第一弾として、「MgB2線材と水素応用」をテーマとした、MgB2材料・線材特性からシステム応用に至までの最先端技術について、それぞれの分野の一流研究者を講師としてお招きし、分かりやすく講義していただきます。
 また、初日には、学生参加者を対象とした学生研究発表(1人5分~10分程度)を行い、優秀発表者には表彰を行います。なお、本セミナーは、参加者と講師との交流を深めるために宿泊形式としています。多数の学生、若手研究者・技術者の参加をお待ちしております。

主 催
低温工学・超電導学会 東北・北海道支部
テーマ
超伝導材料・応用技術の最前線(1)
日 時
2011年9月7日(水)~8日(木):1泊2日
会 場
作並温泉ゆづくしの宿「一の坊」(宮城県仙台市青葉区作並字長原3)
参加費
学生5,000円、正会員10,000円、非会員15,000円(テキスト代を含みますが、昼食・宿泊費は含みません)
払込方法
参加申込をしていただいた方には別途ご連絡いたします。
プログラム
【1日目】9月7日(水)
 
13:20
13:30  
開会式
 
13:30
15:30  
学生研究発表(プログラムは後日配布)
 
15:30
15:40  
休憩
 
15:40
17:10  
講義1
濱島高太郎先生(東北大学大学院工学研究科・教授)
 
19:00
21:00  
夕食・懇親会・研究室紹介
 
【2日目】9月8日(木)
 
9:00
10:30  
講義2
熊倉浩明先生((独)物質・材料研究機構,伝導材料センター・センター長)
 
10:30
10:40  
休憩
 
10:40
12:10  
講義3
白井康之先生(京都大学エネルギー科学研究科・教授)
  12:10 12:20  
修了式、解散
参加申込締切
2011年8月23日(火)
申込方法
E-mailまたはFAXにて、氏名、所属(学生の場合は学年と指導教員)、連絡先、住所、電話番号、E-mailアドレスを、下記申込先(津田)までご連絡ください。
申込・問合せ先
東北大学大学院工学研究科 電気・通信工学専攻 津田 理
〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-05
TEL・FAX 022-795-5020 E-mail:tsuda@ecei.tohoku.ac.jp
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