平成 18 年度 東北・北海道支部 第11回 超伝導・低温若手セミナー 支部だより
低温工学協会東北・北海道支部主催の第11回超電導・低温若手セミナーが、北海道洞爺湖畔において2006年9月5日(火)から7日(木)までの3日間にわたり開催されました。本セミナーは、超電導の基礎から超電導体を用いた線材やデバイス・それらに関連する低温技術・超電導の多方面への応用を理解してもらうことを目的に、学生や大学・企業の若手研究者・技術者を対象にして毎年開催されています。今回は3年間継続の「新たな展開のための超電導講座」の第2回目として、「超電導のエレクトロニクス応用、線材・材料、大型応用」をテーマに、それぞれの分野の一流研究者を講師にお迎えして分かりやすく講義をしていただきました。初めての北海道での開催でしたが、遠方にもかかわらず学生・正会員・講師を含めて25名の参加者がありました。移動に時間がかかるので、例年と構成を変えて初日15:00開始から3日目朝9:00終了・解散でセミナーを行いました。
セミナー初日は支部長大嶋先生の発案で、初めての試みでしたが学生研究発表会を行いました。発表8分・質疑応答2分で14名の学生が自身の研究発表を行いました。様々な分野の熱心な発表があり、緊張感もあってよかったと思います。続いて各研究室の紹介を代表者に行ってもらい、研究室の構成や雰囲気などを知ることができました。
2日目は朝から晩まで3名の講師の先生に講義をしていただきました。午前中は「超電導エレクトロニクス応用の最前線」と題して、(財)国際超電導産業技術研究センター超電導工学研究所の田辺圭一先生に講義していただきました。まず超電導での特徴的な現象の話の後、特にエレクトロニクス応用の立場からジョセフソン接合の解説を詳しくしていただきました。次に、センサー応用として各種SQUIDセンサーを利用した検査装置や受信機の話、高周波応用として超電導フィルターの話を中心に、デジタル応用として半導体の限界を打破する超高速で低消費電力の単一量子(SFQ)デバイスの話をしていただきました。続いて低温超電導SFQデバイス開発の現状の紹介と、さらに高温超電導SFQデバイスの問題点や開発現状まで解説していただきました。フィルターやチップインモジュールについての専門的な質問も多く、時間が不足気味でした。
午後はまず東北大学金属材料研究所、強磁場超伝導材料研究センターの淡路智先生に「超伝導材料の基礎、現状、将来展望」と題して講義をしていただきました。超電導マグネットをクエンチさせた時の影像に始まり、基礎的な話を交えながら超電導体が超電導材料として実用になるまでの課題・不安定性の克服方法を詳しく解説していただきました。そして実用線材の構造や設計・作成プロセス、高温超電導線材開発の現状、高温超電導バルク電流リード、次世代超電導線材・マグネットの展望まで幅広く話していただきました。超電導マグネットのクエンチ影像は何度も見させていただき印象的でした。高温超電導体の磁束状態図やマグネットのトレーニングについての質問が活発になされました。
最後の講義は「先端技術が統合した大型超電導装置の開発に学ぶ」と題して、新潟大学大学院自然科学研究科の山口貢先生より、超電導マグネットの大型応用について講義していただきました。企業に長くおられた経験を踏まえて、実際にモノを作る時の苦労や開発秘話を聞かせていただきました。超電導発電機・磁気浮上列車・MRI等の超電導マグネットの話に加えて、超電導機器の開発・研究がいかに面白いかを特に学生さんに向けて熱く語っていただきました。突然質問を当てられ戸惑った様子の学生さんもいました。
3日目朝には修了式が行われ、学生受講者全員にセミナー修了証書が手渡されました。また学生研究発表会の優秀発表者として、東北大学・小黒英俊君、奈良雄樹君、井上拓士君、山形大学・小野哲君の4名が支部若手奨励賞を表彰されました。
合宿形式で学生同士や講師の先生・他大学の先生と交流し、親睦も深めることができました。昼間の密な発表会・講義と出し物つきの懇親会や連日の夜中までの談話を通して、セミナーの目的を十分に達成することができたと思います。終了後に寄った有珠山西山火口散策路やロープウェイでは、他にはない景色を見ることができたと思います。
講師の先生方には、ご多忙中にも拘らずテキスト原稿を事前に準備していただき、さらに3日間を通して参加していただき、ここに改めて御礼申し上げます。本若手セミナーは来年以降も続けていきますので、多数の学生・若手研究者・技術者が参加して一層深い知識の習得や交流を期待しています。最後になりましたが、快く研修宿泊施設を貸していただいた北海道電力(株)様と、手続き等でお骨折りいただいた関係各位様に心から感謝いたします。
(北海道工業大学 槌本昌則)
主 催 |
: | 低温工学協会 東北・北海道支部 |
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日 時 |
: | 平成18年9月5日(火)15:00 ~ 9月7日(木)9:00 |
会 場 |
: | 洞爺湖、翠湖荘(北海道電力(株)保養施設)北海道有珠郡壮瞥町字壮瞥温泉88-26 Tel. 0142-75-4063 |
参加費 |
: | 正会員35,000円、非会員40,000円(宿泊費、テキスト代含む) (注1:同時学会入会申込みの方も会員と認めます) (注2:学生は学生会員に入会申込することにより15,000円を割引します) |
プログラム |
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【1日目】9月5日(火) |
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15:00 |
〜 |
開会式、ヤングミキサー(学生研究発表)、夕食、フリーディスカッション |
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【2日目】9月6日(水) |
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9:00 |
〜 |
12:00 |
「超電導エレクトロニクス応用の最前線」 |
田辺 圭一 先生(ISTEC) |
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13:00 |
〜 |
15:30 |
「超伝導材料の基礎、現状、将来展望」 |
淡路 智 先生(東北大) |
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15:30 |
〜 |
16:00 |
休憩 |
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16:00 |
〜 |
18:30 |
「先端技術が統合した大型超電導装置の開発に学ぶ」 |
山口 貢 先生(新潟大) |
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夕食・懇親会 |
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【3日目】9月7日(木) |
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朝食後 | セミナー修了式 |
幹 事 |
: | ■ 北海道工業大学/ 槌本 昌則 tsuchi@hit.ac.jp ■ 東北大大学院/ 濱島 高太郎 hamajima@ecei.tohoku.ac.jp ■ 山形大学工学部/ 平野 悟 shirano@yz.yamagata-u.ac.jp |
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