東北・北海道支部 だより(2017年度市民講演会)
東北・北海道支部の平成29年度市民講演会は、11月11日(土)に岩手大学理工学部テクノホールで開催されました。盛岡での市民講演会の開催は平成25年(2013年)に続き4回目です。講演会のテーマは「超電導・加速器技術の先端医療への貢献」として、超電導が最も身近に応用されているMRIの最先端技術と、岩手県民にとって関心が高い国際リニアコライダー(ILC)を含めた加速器の医療応用技術について、2人の先生にお話しいただきました。
最初に岩手医科大学医歯薬総合研究所所長の佐々木真理先生から、「超電導を医療に活かす —MRIでここまで分かる—」と題して講演を頂きました。日本には現在、超電導を用いたMRIが1.5T級4000台、3T級700台、7T級5台が稼動しており、医療診断には欠かせない装置となっています。講演の中でX線CTとの違いや岩手医大に設置されている7T-MRIの特徴を実際の画像を用いて分かりやすく説明して頂きました。MRI強磁場化のメリットとして、磁場強度Bに比例するS/N比(画質)の向上や、Bの二乗に比例する磁化率効果の向上(組織の違いの明瞭化)が説明され、MRI医学の立場から超電導技術の向上に対する強い要望が述べられました。
続いて高エネルギー加速器研究機構名誉教授の吉岡正和先生から、「ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)等の加速器を用いた医療応用」と題して講演を頂きました。BNCTとはホウ素薬剤をがん細胞に選択的に捕捉させ、そこに中性子線を照射することで、中性子とホウ素との核反応で放出されたアルファ線ががん細胞だけを破壊するという画期的な治療方法で、これまでは原子炉で発生する中性子線を用いていましたが、加速器技術を用いて中止線源を小型化することで病院での治療が可能になっている状況です。さらに、現在は輸入に頼っているTc-99mなどの医用ラジオアイソトープをILCに用いる加速器の要素技術を使って国内生産する構想も紹介されました。
先端医療という身近で関心が高いテーマに対して、一般市民、学生、低温工学会員あわせて約70名参加して熱心に講演を聴き、多くの質問が講師の先生へ寄せられました。超電導現象や低温工学が以外にも身近な存在であることを実感できる講演会となりました。
(岩手大 藤代博之)
2017年度 市民講演会のご案内
テーマ | : | 〜超電導・加速器技術の先端医療への貢献〜 |
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主 催 | : | 低温工学・超電導学会東北北海道支部 |
後 援 | : | 盛岡市、盛岡商工会議所、岩手県 ILC 推進協議会 |
日 時 | : | 平成29年11月11日(土)14時〜16時 |
会 場 | : | |
次第 | : | |
14:00 | : | 開会、主催者挨拶 低温工学・超電導学会東北北海道支部支部長 中島健介(山形大学教授) |
14:00 | 〜 | 15:00 |
演題1「超電導を医療に活かす-MRI でここまでわかる-」
講師:岩手医科大学 医歯薬総合研究所 所長 佐々木真理先生 |
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15:00 | 〜 | 16:00 |
演題 2「ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)等の加速器を用いた医療応用」
講師:高エネルギー加速器研究機構名誉教授・岩手大学客員教授 吉岡正和先生 |
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参加費 | : | 無料 |
申込先 | : | 申込不要 |
問合先 | : | 岩手大学理工学部 藤代博之 電話:019-621-6363 e-mail:fujishiro [@] iwate-u.ac.jp |
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