東北・北海道支部 だより(20周年記念特別講演会)
東北・北海道支部は今年度で20周年を迎えました。これを記念して、2015年10月30日(金)に記念特別講演会・祝賀会を、10月31日(土)に記念市民講演会を開催しました。講演会は、加速器に関する超伝導応用の中で東北に関連が深い講演を2件お願いしました。一つは北上山地に設置を検討している国際リニアコライダー、もう一つは山形大に建設が始まった重粒子線加速器によるがん治療装置です。記念特別講演は、東北大学電気通信研究所本館6階大会議室にて、髙エネルギー加速器研究機構特別教授でリニアコライダー推進室長の山本 明先生に、「超伝導低温工学が担う「素粒子物理学・最前線」–国際リニアコライダー(ILC) の実現にむけて–」と題して講演して頂き、 54名の参加者となりました。ILCは欧州共同原子核研究機構(CERN) における陽子衝突型加速器(LHC)に次ぐ次世代加速器として計画され、日本の東北地方に設置する計画が進んでいます。特別講演では、この計画実現に向けた取り組みについて詳しく御説明いただきました。ILCは、全長31kmにわたる直線状の加速器で、円形加速器であるLHCとは大きく形状が異なっています。ここに、超伝導加速空洞ユニットを約14,000台並べ、電子と陽電子を、それぞれ11kmにわたって加速し衝突させる構造とのことです。講演では、次世代加速器としてILCだけで無く、円形加速器(Future Circular Collider: FCC)も含めた将来計画を紹介していただき、その中で超伝導技術の重要性について解説頂きました。また、超伝導以外の材料技術の重要性についても力説されました。 特別講演に続き20周年記念祝賀会を、特別講演会場の向かいの中会議室で行いました。東北大学電気通信研究所本館は、今年度春に竣工したばかりで、ガラス張りの中会議室からは仙台市東方向を見渡すことができます。最初に、学会長の佐藤謙一氏にご挨拶を頂いた後、初代支部長の能登先生に音頭をとって頂いて乾杯し、祝賀会は和やかな雰囲気で行われました。濱田関西支部長、圓福九州・西支部長にも、遠路はるばる参加いただき、あっという間の2時間が過ぎてしまいました。
翌日の市民講演会は、仙台市情報・産業プラザ セミナールーム(2)(AER 6階)で、午前11時から開催されました。AERは仙台駅近くのショッピングビルで、一般市民対象とのことで来場しやすい場所での開催としました。今回は、山形大学医学部教授の根本建二先生に、「山形大学における重粒子線治療プロジェクト」と題する講演でした。カーボンなどの粒子を加速し、患部に照射するがん治療は、現在先進がん治療として認知されつつあります。これまでは関東圏のような人工密度の高い地域にしかありませんでした。最近、東北初の重粒子線がん治療施設の建設が山形大学に認められ、本年より建設が始まります。根本先生には、重粒子線を用いたがん治療の基礎から東北初の施設に至るまでについて、易しく説明して頂きました。がん治療としての重粒子線は、従来の放射線治療とは異なり、ブラッグ条件を満たす特定の深さで吸収が大きくなることを利用して、がん細胞近傍にのみダメージを与えることが可能な技術です。このために、転移していないがんの場合に特に有効であり、脳腫瘍などのように手術困難部位にあるがん細胞も治療できます。しかし、転移の進んだがんや、血液のがんである白血病など、広い範囲に広がっている場合には、別の治療方法が良い場合もあり、信頼できる専門医に相談することが重要だそうです。現在、東北がんネットワークという東北地方の多数の病院が参加する組織を作っているところだそうで、東北地方全体で装置の有効利用ができるようにしたいとのことでした。今回山形大に導入する装置において最も特徴的な点は、超伝導回転ガントリーだそうです。ガントリーは重粒子線を患部に照射するための方向や形状を決める装置であり、超伝導マグネットによってコンパクトとなることで、回転が可能となり任意の方向からの照射ができます。これによって、より正確に患部への照射が可能となるとこのことです。重粒子線がん治療に、超伝導が使われていることは一般的にはあまり知られていないかもしれません。しかし、利用者が意識せず身近にあることが本当の実用とすれば、超伝導技術の実用化も少しずつ進んでいるようにも感じます。今回の市民講演会には一般市民の方9名を含む43名の参加者がありました。もはや2人に1人ががんで亡くなる時代、がん治療の情報を必要としている方々が少なからずいるということを実感しました。今回、低温工学・超伝導学会のイベントでしたが、市民講演会がその一助になれた部分があるのではと感じました。市民講演会には、応用物理学会東北支部の後援を頂きました、厚く御礼申し上げます。
特別講演中の山本教授 |
市民講演会で質問に答える根本教授と司会の中嶋支部長 |
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(東北大 淡路 智)
東北・北海道支部20周年記念事業のご案内
(公社)低温工学・超電導学会 東北・北海道支部
本年、低温工学・超電導学会は20周年を迎えます。これを記念して以下のように記念講演会・祝賀会、市民講演会を開催致します。特別講演では、東北に計画されている国際リニアコライダー(ILC)について、リニアコライダー推進室長の山本明教授に講演をして頂ける運びとなりました。その後、祝賀会も企画しております。また、翌日には市民講演会として山形大に設置が進んでいる重粒子線加速器による癌治療について、根本建二教授に講演頂きます。東北・北海道支部会員、維持会員及び関係の協会員の方々は是非ご参加下さいますようお願い申し上げます。
■特別講演会及び祝賀会 |
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日 時 |
: | 2015年10月30日(金)15:30〜 |
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会 場 |
: | 東北大学 電気通信研究所本館6階 大会議室 (仙台市青葉区片平2-1-1) |
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1.特別講演会 |
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参 加 費 |
: | 無料 |
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プログラム |
: | 15:30-15:40 |
支部長挨拶「発足20周年を迎えて」 (公)低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 支部長 中島健介 |
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15:40-16:40 | 特別講演「超伝導低温工学が担う「素粒子物理学・最前線」
–国際リニアコライダー(ILC) の実現にむけて–」 高エネルギー加速器研究機構 特別教授 山本 明 |
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2. 記念祝賀会 |
17:30-19:30 | 電気通信研究所本館6階中会議室予定 |
■市民講演会 |
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日 時 |
: | 2015年10月31日(土)11:00〜12:00 |
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会 場 |
: | 仙台市情報・産業プラザ セミナールーム(2) (AER 6階) http://www.sendai-aer.com/ |
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協 賛 |
: | 応用物理学会東北支部 |
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プログラム |
: | 11:00-11:10 |
支部長挨拶 |
(公)低温工学・超電導学会 東北・北海道支部 支部長 中島健介 |
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11:10-12:10 | 粒子線加速器による先進癌治療
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山形大学 教授 根本建二 |
申込締切 |
: | 2015年10月16日(金) |
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申込方法 |
: | 氏名、所属、連絡先、講演会・記念祝賀会・市民講演会の出欠を明記の上、下記申し込み先にE-mailかFAXでお申し込みをお願い致します。 |
問合せ先 | : | 東北大学 金属材料研究所 淡路 智(庶務幹事) 〒980-8577 仙台市青葉区片平 2-1-1 TEL: 022-215-2147 FAX: 022-215-2149 e-mail: kitasibu@imr.tohoku.ac.jp |